1. はじめに
中小企業のM&A(合併・買収)は、経営者にとって重要な決断です。売却価格の目安を知ることは、適切な交渉を行うために不可欠です。本記事では、中小企業のM&Aにおける売却価格の目安について詳しく解説します。
2. M&Aの価格決定要素
M&Aの価格は、以下の要素によって決定されます。
- 純資産: 企業の純資産は、売却価格の基準となります。純資産は、企業の総資産から負債を差し引いたものです。
- 営業利益: 過去数年間の営業利益も価格決定の重要な要素です。一般的には、2~5年分の営業利益が考慮されます。
- 市場価値: 同業他社の市場価値や株価も参考にされます。
- 無形資産: 顧客リスト、技術力、従業員のスキルなどの無形資産も価格に影響を与えます。
3. 価格算定方法
中小企業のM&Aにおける価格算定方法は主に以下の3つです。
- コストアプローチ: 純資産を基準に価格を算定します。時価純資産法が一般的です。コストアプローチでは、企業の純資産を基に価格を算定します。計算手順:
- 総資産の評価: 企業の全ての資産(現金、設備、在庫、不動産など)を時価で評価します。
- 負債の評価: 企業の全ての負債(借入金、未払金など)を時価で評価します。
- 純資産の計算: 総資産から負債を差し引きます。
- インカムアプローチ: 将来の収益を基に価格を算定します。DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)がよく用いられます。インカムアプローチでは、将来のキャッシュフローを基に価格を算定します。
計算手順:- 将来のキャッシュフローの予測: 企業が将来生み出すと予想されるキャッシュフローを予測します。
- 割引率の設定: 将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くための割引率を設定します。割引率は、企業のリスクや市場の状況に基づいて決定されます。
- 現在価値の計算: 予測したキャッシュフローを割引率で割り引き、現在価値を計算します。
- マーケットアプローチ: 類似企業の市場価値を参考に価格を算定します。類似会社比較法(マルチプル法)が一般的です。マーケットアプローチでは、類似企業の市場価値を参考に価格を算定します。
計算手順:- 類似企業の選定: 業種や規模が類似している企業を選定します。
- 評価指標の収集: 類似企業の売上高、営業利益、EBITDA(利息・税金・償却前利益)などの評価指標を収集します。
- マルチプルの計算: 類似企業の評価指標を基にマルチプル(倍率)を計算します。
- 対象企業の評価: 対象企業の評価指標にマルチプルを掛けて評価額を算定します。
4. 価格交渉のポイント
価格交渉を成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 適切な価格設定: 売り手側は、自社の価値を過大評価しないよう注意が必要です。
- 専門家の活用: M&Aの専門家を活用することで、適切な価格設定と交渉が可能になります。
- 透明性の確保: 交渉の過程で透明性を保つことが信頼関係の構築に繋がります。
5. まとめ
M&Aの金額のおおまかな目安は「時価純資産額+営業利益×2~5年分」になります。
中小企業のM&Aにおける売却価格の目安は、複数の要素を考慮して決定されます。適切な価格設定と交渉を行うためには、専門家の助言を受けることが重要です。